Vol.26 ドーバー和酒シリーズ

ドーバー酒造(日本)



画期的和素材リキュール「ドーバー和酒」の誕生

今から約二十数年前、昭和60年(1985年)にドーバー和酒は誕生いたしました。当時の日本の和菓子文化は、新しいものへの探求が人々の関心を集め、和菓子業界も「生どら」や「いちご大福」などのヒット商品を生み出しました。
そんな時代背景の中、製菓向け洋酒専門メーカーとして、ドーバーでは和の素材を用いたリキュールで、これまでに接点の薄かった和菓子業界との対話をしたいという思いから「和酒」の開発に着手いたしました。弊社にとって、この和素材リキュールの開発と販売は容易なことではありませんでした。
天然和素材を浸漬抽出して造るこのまったく新しいカテゴリーの製品は、開発当初、濁りや沈殿物など様々な問題に突き当たり、品質を安定させることに悩まされ続けました。浸漬の方法や濾過の強さなどを徹底的に試験し、さらにこのデリケートな商品特性を守る品質保持のために光を遮蔽する機能と、美しさを求めたデザインの黒色ボトルをオリジナルで製作し、ラベルも凛とした和を強調するなど、細やかな商品開発とこだわりの末、昭和60年にようやく商品化にたどり着きました。

製造への苦心

また、開発当初から現在に至るまで原料調達、原料管理においても徹底的にこだわり、中でも開発に苦心し発売が遅れた〈桜〉は、和菓子業界では桜餅に使用される伊豆大島産のものに限定するなどして品質の向上と安定を図っています。さらに〈柿〉は、香りの抽出が困難なため、原材料にピューレ状にした熟柿を使用し、風味を高めることに成功しました。また、商品によって数種のハーブを使用することで、味と香りの調和とバランスに時間を費やしました。
こうして開発された和酒リキュールは当初、梅、抹茶、栗、小豆、金柑、柚子、蓬、生姜、紫蘇の9アイテム。後に葡萄、桜、柿が発売され、現在では12アイテムに至りました。発売当初、全国各地で和菓子業界の方々を中心に和菓子講習会を実施しましたが、未知なる画期的和酒への興味が中心で、上生菓子に影響をもたらすことことも少なく、自然と沈静化しました。
当時、洋菓子業界ではジャパンケーキショー東京(当時は東日本洋菓子作品展)とスプラウト会作品展が行われていましたが、昭和61年のスプラウト会で特別イベントとして「ドーバー和酒」を使用した和風創作アントルメがテーマとして取り上げられ、全52品からなる出品作品はどれも創造性に富み、これをきっかけに「ドーバー和酒」は、むしろ洋菓子業界で広く受け入れられるようになりました。

日本バーテンダー協会での快挙

平成8年には、世界バーテンダー協会総会が、戦後初めて日本で開催されました。ドーバー和酒は、日本のオリジナルリキュールとして出展し、世界から集う多くの皆様に、強烈な話題を提供しました。また、思わぬ結果として平成13年にはNBA(日本バーテンダー協会)主催の第28回全国バーテンダー技能競技大会において、長野県松本市のMAIN BAR COATの林 幸一氏の〈ドーバー和酒 紫蘇〉を使用したカクテル、「乙女撫子」が総合優勝を獲得、更に同大会に於いて、〈ドーバー和酒 葡萄〉を使用したカクテルで東京銀座のBar OPUS no.1の三隅 豊氏が創作部門1位を取るなどして注目を集めました。
NBA会長の特別談話によると、「バーテンダー競技会でカクテルのネーミングに和名が使用されたのは今大会が初めてで、ドーバー和酒は業界初の和素材への注目と日本のカクテル文化が和名となったことは歴史的な快挙」と賞賛のスピーチを頂きました。現在もこだわりのバーやホテルで定着していることは、天然素材にこだわった和酒にとって誠にうれしい結果です。
当初、和菓子業界向けに開発されたドーバー和酒シリーズが、和菓子をはじめ洋菓子、バーやホテル・和風レストランのデザートやアペリティフなど、幅広いジャンルの方々に、こだわりのリキュールとして創作のアシスタントと認められる存在へと成長したことは、製菓、ドリンク、ガストロノミーの業務用洋酒を社是とするドーバーにとって誠に名誉なことです。
日本を代表し、世界大会に出場した林氏と三隅氏の2作品に敬意を表したいと思います。

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